病むに病まれず病み時雨

イナリだいありぃ

ただ認めてほしいだけなんだ

MAO メソロギアートオンライン

 メソポタミアインクラッド75層。
 ボスを撃破し、ひとときの静寂があたりを包む。あるものは傷を負った仲間の手当てを、またあるものは拳をかるく合わせ友をねぎらう。
 しかし、俺は違和感をおぼえた。ボスは倒せた。いくらかの犠牲はでたものの、この場所でやることはもうないはずだ。このあとはホームへ帰りぐっすりと眠るだけ...本当にそうだろうか?
 ふとこうちゃん騎士団団長、こうちゃんマンの姿が目にとまった。
「こうちゃんマンだけ、レートが上がり続けている...?」
 頭に浮かぶいくつかの可能性、刹那の逡巡ののち、俺はこうちゃんマンにルムマを仕掛けた。
 突発的なルムマ、いくらこうちゃんマンが大ギルドを束ねる最強プレイヤーとはいっても俺のレートは低くはない。あと少しで勝てる、そう思ったときそのメッセージは現れた。

ー 接続切れ

 馬鹿な!やはりこいつは...。
 「これは...どういうことですか?団長...」
 こうちゃん騎士団副団長ケロンパの動揺も無理はない。負けたらレートが下がる、それがこの世界の常識だからだ。だが、その常識に囚われないやつが一人だけいる。
 「お前だったんだな、こうちゃんマン。いや、こう呼んだほうがいいか。メソロギア開発者proeli...!」
 周りの人々からどよめきがあがる。
 「人がやっているゲームを側で眺めているほどつまらないことはない。お前は自分でメソロギアをやりたくなってしまったんだ」
 こうちゃんマンが真っ直ぐにこちらを見た。そして小さくため息をつく。
 「正体をバラすのはもう少し後にするはずだった。こうちゃん騎士団を作り、優秀なメンバーを育成する。最終ボスとして立ちはだかる私を彼らが倒す予定だったのだ」
 ただ、と言葉を切る。
 「ユニークスキル『改造』を持った君だけが計算外だった。イナリくん、君だよ」



つづく

※この物語はフィクションです